ギョーザ作りの達人

私はギョーザを作る事が好きである。ギョーザ作りに関しては超一流の腕を持っていると言っても過言ではない。私ほどギョーザ作りを愛し、なんて事ない日常でも常にギョーザ作りの事を考えている人もいないだろう。私はいつでもギョーザなのだ。

ここで「ギョーザ」を知らない人の為に、「ギョーザ」の説明をする。ギョーザ・・・漢字で書くと餃子だ。人の顔の左右に付いている「耳」と呼ばれる部分の端をひっぱり、前側に押し倒す。これが「ギョーザ」であり、押し倒す作業を「ギョーザ作り」と言う。

ギョーザ作りは力の加減が難しい物である。変な位置に力を入れると「イタイ」と言われてしまうのだ。この言葉はギョーザ職人にとって、非常につらい物である。嫌がらせでも何でもなかったつもりが、「悪気を持ってギョーザ作りをした」ととられてしまうのだ。私自身はただ純粋にギョーザが作りたかっただけなのに、そのように言われてしまうと「2度とギョーザなんかするかっ!」という気分になる。その結果、3人に1人はギョーザ職人への道を諦めてしまうと言われている。

私も若い頃は幾度となくギョーザ職人への道を挫折しかけたものである。今の私があるのは、当時の私を支えてくれた友人達のおかげなのだ。その頃、よく言ってくれた言葉を今でも鮮明に覚えている。
「いきなり何すんのよ、あんたっ。」
懐かしい言葉だ。

しかし最近は、気心の知れた友人達にも私のギョーザ熱が不快に感じている事を知り、ウズウズしつつもギョーザ作りを休む事がある。ギョーザ作りの達人とは言え、休息は必要なのだ。また私ほどになれば、形のいいギョーザになるかどうかくらいは、ギョーザを作らなくとも判断できる。休息中であっても常に目を光らせて優れたギョーザの土台を探しているのだ。

私のギョーザの旅はまだ始まったばかりである。

(Jan/27/2002)